映画は映像・言葉・文化を時空の中で融合し表象するメディアであり、第七の芸術です。映画文化はあらゆる境界をこえて無限にひろがります。
このページには、私のコメントやエッセイを載せていきます。
(C)2011 Pathe Productions Limited , Channel Four Television Corporation and The British Film Institute
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
原題:IRON LADY (2011)
「鉄の女」と呼ばれた元英国首相マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher 現在88歳)の伝記映画で、日本の高齢者世代には親しみのある女性首相である。
このサッチャー首相役に米国女優のメリル・ストリープが挑戦して、とくに彼女の美しいクイーンズ・イングリッシュのスピーチや88歳を向かえる元首相の姿を存分に演じきっている。彼女が今年度、2度目の(米)アカデミー賞主演女優賞を受賞したことを納得できる映画作品である。
【映画情報】
本年度、第84回(米)アカデミー主演女優賞をメリル・ストリープが受賞。1982年に、『ソフィーの選択』で受賞以来、30年ぶりに2度目の受賞。
2011年.イギリス映画
3月16日~全国ロードショー 上映中 公式サイト:http://www.toho.co.jp
配給:ギャガ 後援:ブリティッシュ・カウンシル
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Director|Phyllida Lloyd
Writer|Abi Morgan (screenplay)
Stars|Meryl Streep, Jim Broadbent and Richard E. Grant
・Trailer|http://www.imdb.com/title/tt1007029/
(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『ヒューゴの不思議な発明』
原題:HUGO
(C) 2012.2.18 by m.tsukada
本映画の鑑賞後にあげる第一声は、誰も同じで、子供から大人まで一緒に子供から大人まで一緒に感動を共有できる映画である。『ヒューゴの不思議な発明』は、希望を取り戻すことを使命とする少年と少女の冒険物語で終わってはいない。映画史において重要な映画監督・製作者と呼ばれるジョルジュ・メリエスを再発見し、映画を文化として認識させる映画でもある。架空の人物と実在した人物とを見事に融合させ、それを3D映像で完成させた。マーティン・スコセッシ監督の映画文化への功績は偉大である。
【STORY】
少年ヒューゴは火事で機械作りの得意な父親を失くし、孤児になったが、パリ駅の大時計を管理する叔父に引き取られる。その叔父も1925年にセーヌ河の沿岸でアル中毒死した。ヒューゴは孤児になってしまうが、孤児院に送られることを恐れて、父の形見のぜんまい仕掛けの機械人形(an automaton)の修理をしながら時計塔の裏部屋にかくれて暮らしていた。大時計の針の隙間から駅構内を見下ろすと、行き交う人々やカフェや駅構内の玩具店が見える。その店先には少年の興味を惹いてたまらない数々の自動機械で動く玩具が置いてある。
ある日、ねじを回すと自動で走り回る小ネズミを盗もうとして、老店主に見つかってしまった。そして、ポケットの中の物を全部出さなければ駅の公安委員に引き渡すときびしく通告される。その中に1冊の小さな本があった。それは数々の不思議なイラストが描かれ、説明文も書かれている本であった。老店主はそれを見てさらに険しい表情になり、この本は家へ持ち帰って燃やしてしまうという。
老店主は本を返してと嘆願する少年を振り切って帰って行った。その後を追って行くヒューゴ。途中で何度も追い払われながらも老人の家までついて来た。家の中に入れないヒューゴ少年は途方にくれたが、窓辺に見えた家人に小石を投げて合図すると、家の中から現れたのは少女イザベルであった。パパ・ジョルジュから本を取り返すのはとても無理だけど燃やさないように協力する、そして、秘密や冒険が大好きだから取り戻す手伝いをしたい、と約束してくれた。これがきっかけとなって、物語が展開していく。______。
この玩具店の老店主は、じつはジョルジュ・メリエスその人であった。彼こそは、映画の創世記に種々の技術を創案した映画の先駆者で。監督・出演・製作・デザインにいたるまでを手がけ、テーマやストーリは実際に起きた事件の再現からファンタジーに満ちた作品まで多様なジャンルの作品を創作したフランスに実在した映画製作者(Georges Melies.1861.11.8-1938.1.21)である。
その人物が1930年代のパリ駅構内の玩具店の店主をしているとは____。それには時代の渦巻く社会事情があった。ジョルジュ・メリエスは大戦中に破産し、一方、当時の映画傾向が彼の方針と異なる方向へ向かったこともあって、きっぱりと映画とは手をきり、過去の栄光をすべて捨て去り、玩具店の店主に甘んじていた。
本映画ではその時代の彼を登場させて、少年少女とかかわる重要人物としている。
マーティン・スコセッシ監督は本映画では、実在した人物ジョルジュ・メリエスと彼の妻と、架空人物の少年ヒューゴと少女イザベルを登場させて、ジョルジュ・メリエス製作の映画(『月世界旅行』)の再発見を映画の中の映画として出現させた。そのコンテンツが時空を越えて現時点からさらに未来につながることを暗喩している。つまり、時間軸を現在・過去・未来の3次元に亘らせ、全体を3D(スリー・ディメンション)構成の映画作品にした。
このように観ると、『ヒューゴの不思議な発明』は、希望を取り戻すことを使命とする少年と少女の冒険物語で終わってはいない。映画史において重要な映画監督・製作者と呼ばれるジョルジュ・メリエスを再発見する映画でもある、と言えよう。
【映画史リテラシー】
映画が動く絵として最初に登場したのは1895年のこと。オー牛ストとルイ・リュミエール兄弟は『ラ・シオタ駅への列車到着』(1897)を発表した。巨大な蒸気機関車がスクリーンに現れて横切ると、これを観た観客は驚き飛び上がったというエピソードが残っている。ジョルジュ・メリエス(1861~1938)はこの風潮をみてこれは新しい芸術様式を創作するチャンスになると考え、本業である手品師のマジック世界をステッピング・ストーンとして、映画製作に没頭するようになった。
彼の初期の作品は、ステージで見せるマジック・ショーの再現のようであった、これは『ヒューゴの不思議な発明』の中の映画で上映されている。
しだいにストーリーテリングや編集技術の実験を行い、特殊効果を産出した。ストップ・モーション、コマ抜き撮影、多重露光、場面転換(ディゾルブ)手書きの色彩などの技法である。彼の発明したこの手法は今日では常識的な映画手法としてなお使われている。
メリエスの傑作は1902年に製作された上映時間14分の『月世界旅行』(1902年製作 .ジュール・ヴェルヌ原作). である。これは映画史にその名を刻んでいる作品である。
当時、映画の発明や製作に係わった人物には、リュミエール兄弟(仏国)の他にもトーマス・アルヴァ・エジソン(米国)もいるが、メリエスは彼らと一時的に係わるが、結局は収益の利益分配などで袂を別つ。当時、すでに3D映画のような映像効果も考案されていたそうである。これらについては、メリエス研究の映画史家たちによってさらに詳細に記述されることだろう。
※『月世界旅行』(1902)
The original film is public domain* / "Le Voyage dans la Lune" (1902) / Creative Commons "by-nc-sa" License / http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.1/jp/
(字幕:日本語. 音声:英語のナレーション)
※第1章ー映画の誕生(2)「20世紀の魔術師~ジョルジュ・メリエスの魔術映画~
http://www5f.biglobe.ne.jp/~st_octopus/MOVIE/BIRTHOFMOVIE/2MELIESS.htm
上記は、映画史リテラシーに役立つサイトである。
映画英語教育の視点から、本映画の推奨ポイントを挙げておこう。
【推奨ポイント】
□子供も大人も共に楽しめる。ファンタジー、アドベンチャに富む3D映像。
□標準的なイギリス英語とアメリカ英語で、普通の速さで明確な話し方をしているので聴き取りやすい。一部にフランス語。
□ ヒューゴ少年の希望へのミッションがよく伝わってくる。
□ ジョルジュ・メリエスの映画史における評価を理解できる。(映画史リテラシー)
□ 1930年初期のパリ駅周辺の景観を再現している。
□ 絵や文を自動記述できる機械仕掛けのロボット(automaton)が登場。映画には登場しないが、社会現象としてはこの時代に、自動記述できる機械に関心を持つシュルレアリストを始めとする詩人や小説家、美術家たちが出現していた。
□ 音声が英語、日本語字幕付き。
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【映画情報】
本年度アカデミー賞<最多5部門>受賞
(撮影賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞)
2012/02/27
監督&製作|マーティン・スコセッシ
脚本|ジョン・ローガン(『グラディエータ』2000年製作.でオリジナル脚本賞にノミネートされて脚光を浴びる。脚本家の他劇作も10本以上手がけている。)
原作者|ブライアン・セルズニック(ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家でイラストレータ。「ユゴーの不思議な発明」と「ウォーターハウス・ホーキンズの恐竜」でコールデコット賞を受賞。
主演|エイサ・バターfヒールド(ヒューゴ・カブレ)
- パパ・ジョルジュ/ジョルジュ・メリエス(ベン・キングズレー)
- イザベル(クロエ・グレース・モレツ)
- 鉄道公安員(サシャ・バロン・コーエン)
- ママ・ジャンヌ(ヘレン・マクロリー)
- ヒュ-ゴの父親(ジュ-ド・ロー)
2011年製作アメリカ映画
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
2012年3月1日から、TOHOシネマズ有楽座ほか、全国ロードショー
『三銃士』
原題:THE THREE MUSKETEERS
2011.10.28~全国公開
配給|ギャガ
監督|ポール・W・S・アンダーソン
主演|ローガン・ラーマン(ダルタニアン)/ミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)/オーランド・ブルーム(バッキンガム公爵)
●映画の原作は、Alexandre Dumas(1802-1870)の小説のD'Artagnanである。この小説は、発表当時から大人気である。1921年、1948年、1973年、...、2011年へと、何年かに1度は映画化され、TVでも上映されるのでお馴染みである。
今回の作品がこれまでの作品と唯一違うのは、3Dで製作されているところにある、さらにタイトルの副題:'王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船’から推測できるように、レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した飛行船設計図に基づいて、これをCG技術で製作した飛行船を登場させている。ここが、これまでの『三銃士』作品には観られなかった醍醐味がある。
■映画の見所は、次の諸点であろう。
□ 史実を基に「三銃士」の世界に隠された秘話を、イマジネーションを駆使して、
8台の3Dカメラで撮影した2D、3D映像。
□ バッキンガム公爵VS.三銃士+ダルタニアンが乗船して戦う飛行船(ダ・ヴィンチ
設計といわれる飛行船
□ ミレディの早業アクロバット
□ ドイツの世界遺産ヴェルツブルグのレジデンツ、他
□ 印象的なセリフ:
「一人は皆のために、皆は一人のために」(”One for all, all for one.”/
仏語は、”Tous pour un, un pour tous )。これは三銃士たちの合言葉だが、ラ
グビーではチームプレイの精神協力性を示す言葉として使われる。
□ イギリス英語(品格のある英語で、短いフレーズで聞き取りやすい。一部に罵声
語が出現)、仏語も。
『127時間』 原題:127Hours
配給|Twentieth Century Fox
監督|ダニー・ボイル、脚本:ダニー・ボイル&サイモン・ビューフォイ
主演|ジェームズ・フランコ
●巧みなテクニックのあるアルピニストでさえ、避けきれなかった想定外の落石事故――その生と死の臨界状況から、「生きて戻りたい」という強い願望ゆえに生還した。人間存在の本質を考えさせる。
監督ダニー・ボイルの魅力は、事実をリアルすぎるイメージに映像化するところにある。リアルすぎる映像に反して、ブルー・ジョン・キャニオンの大自然は美しい。身がすくむような峡谷と露出し何重にもうねりあう人を想わせるような岩肌との対比に言葉を失う。
大自然のなかで、人間は一粒の微粒子のようなものだが、そのサバイヴする生命力の強さと凄さに圧倒される。
大自然へ冒険に一人で出かけるときは、万一にそなえて家族や友人たちとの連絡を忘れないようにという教育的な映画でもある。
・監督のこれまでの代表作品
『トレインスポッティング』 Trainspotting (1996)
『ザ・ビーチ』 The Beach (2000)
『スラムドッグ$ミリオネア』 Slumdog Millionaire (2008) ・・アカデミー賞8部門にノミネート、監督賞受賞
『ソーシャル・ネットワーク』
原題: THE SOCIAL NETWORK
配給|ソニー・ピクチャーズエンターテイメント(2010年製作)
2011年1月15日より全国ロードショー
監督|デヴィッド・フィンチャー 製作総指揮|ケヴィン・スペイシー
脚本|アーロン・ソーキン (The 83rd OSCAR Awards 脚色賞を受賞 2011/2/27)
原作|Ben Mezrich. THE ACCIDENTAL BILLIONAIRES
訳書:ベン・メズリック著 「facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男」(青志社)
主演|ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、ルーニー・マーラ
●ハーバード大学在学中に、天才プログラマーのマーク・ザッカーバークが立ち上げたザ・フェイスブック(www.theFacebook.com)は、数年後には世界最大のSNS、"フェイスブック"に成長し、ついに彼は2010年、TIME誌のPerson of the Yearに選ばれた。映画は学生時代、インターネット・プログラミングに一途な彼をめぐり、友人との亀裂や葛藤・裏切りを主軸におき、ザ・フェイスブックが広がっていく過程を捉えた’今ある’青春ドラマに、デヴィッド・フィンチャー監督が創り上げた作品。
映画では、学生仲間の間で交わされる会話のリズムとテンポが速い。大学生活やITプログラムの用語が自由自在に飛び交う。学生企業家のアイディアとその盗用。これをサマーズ学長へ直訴するタイラーとキャメロン。これに返答する自由気風で冷徹な学長。公聴会で当局の質問を聞き流して自己主張するマーク。――これらのシーンで話す英語セリフはじつに耳を澄まして聴くに値する。
名門大学ヨットレース、学年や同窓系列によって差別化されている学生寮、出会いサイトに熱狂する学生たち、時と技を競い合うプログラマーたちの在りのままの姿が映像でよく描かれている。
映画は、ソフトを書くプログラマーの独創牲とは何かを問い、現在、世界で5億人のユーザーがいるという"フェイスブック"のメリットとリスクを考えさせる。
"Do you think anybody would mind if I stayed and used the computer for a minute?" と低くつぶやくMARKの声が耳に残る。
『インセプション』
原題:INCEPTION
配給|パラマウント
監督|クリストファー・ノーラン
主演|レオナルド・デカプリオ(コブ役) /渡辺 謙(サイト役) /エレン・ペイジ(アリアドネ役)
●'No idea is simple when you need to plant it in somebody elses mind.'
巨大企業の後継者の脳に侵入して情報を入れ替える、という発想の移植(inception)。睡眠中に潜在意識の領域(the realm of the subconscious)に潜入して、意識(夢)の多重階層と現実の世界を出入りする。コブがサイトーからうけたプロジェクトでは、多層な円形迷路が設計される。フラッシュバックやサブリミナルで表象される過去や未来ー妻や子供たち。だが、コブはターゲットに向かって進む。躊躇するコブを賢い頭脳の持ち主アリアドネが仲間たちを援える。アイディアとプロットはアメリカ的で単純だが、ハリウッド映画を越えた突っ込みがある。
『シャッター アイランド』
原題:SHUTTER ISLAND
原作|「シャッター・アイランド」デニス・ルヘイン (ハヤカワ文庫刊)
配給|パラマウント ピクチャーズ ジャパン
監督|マーティン・スコセッシ
主演|レオナルド・ディカプリオ(テディ・ダニエルズ)/マーク・ラファロ(チャック・オール)/ベン・キングズレー(ジョン・コーリー医師)
●シャッターアイランドと称する離島の隔離された精神病院と外との世界を行き来して迷走させる。現代の先端精神医学では、ロボトミー(脳手術)か薬物による記憶消滅もありうるという。言葉と映像を二重構成手法で、出口なき出口をさぐるという謎の深まるミステリアス映画である。


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