映画と文化データベース
Movie and Culture Database (MCDB)

□→映画文化
     ・文学・映画・テレビ
     ・諸芸術(音楽・美術・建築・書道・舞踊)


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文学/小説/コミックと映画化作品

2017 Kingsman: The Gold Circle『キングスマン ゴールデン・サークル』 
2016 Inferno『インフェルノ』
2016 SILENCE『沈黙-サイレンス』PDF scilence_2016_mtsukada.pdf
2016 Arrival『メッセージ』PDF arrival_2017_mtsukada.pdf
2014 Gone Girl 『ゴーン・ガール』
2013 The Great Gatsby『華麗なるギャツビー』PDF thegatsby_ys.pdf
2012 Life of Pi『ライフ・オブ.・パイ/トラと漂流した227日』PDFlifeofpie_yokota.pdf
2011 『日輪の遺産/THE LEGACY OF THE SUN』 PDFnichirinisan_ys.pdf

2010 Never Let Me Go『わたしを離さないで』PDF
2010 The Tempest 『テンペスト』*シェイクスピアの戯曲『テンペスト』を原作
2009 Angels & Demons『天使と悪魔』PDF
2008 The Curious Case of Benjamin Button『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』.
2008 The Reader 『愛を読むひと』PDFreader_2008_mtsukada.pdf
2007 Atonement『つぐない』PDF
2007 No Country for Old Men 『ノーカントリー』PDF
2007 The Mist『ミスト』
2006 The Da Vinci Code 『ダ・ヴィンチ・コード』PDF
2005 Pride & Prejudict『プライドと偏見』
2005 The Constant Gardener『ナイロビの蜂』
2003 Cold Mountain『コールド・マウンテン』
2002 Gangs of New York『ギャング・オブ・ニューヨーク』
2002 Doctor Zhivago『ドクトル・ジバゴ』 *1965年のリメイク版

1999 The Green Mile 『グリーンマイル』
1996 The English Patient『イングリッシュ・ペイシェント』  
1999 Notting Hill『ノッティングヒルの恋人』
1999 The Cider House Rules『サイダーハウス・ルール』
1999 The Sixth Sense『シックス・センス』
1997 L.A. Confidencial『L.A.コンフィデンシャル』PDF
1997 Swept from the Sea 『輝きの海』
1995 Dolores Claiborne『黙秘』PDF
1994 The Stand 『ザ・スタンド』
1994 The Shawshank Redemption『ショーシャンクの空に』
1993 The Remain of Day『日の名残り』
1992 The Bridges of Madison County『マディソン郡の橋』
1992 Of Mice and Men『二十日鼠と人間』
1991 Silence of the Lambs『羊たちの沈黙』
1990 Misery『ミザリー』

1986 Stand By Me『スタンド・バイ・ミー』*The Body 
1980 The Shining『シャイニング』
1977 Carrie『キャリー』
1974 The Great GatsbyThe Great Gatsby『華麗なるギャツビー』

1958 The Old Man and the Sea 『老人と海』
1952 The Snows of Kilimanjaro『キリマンジャロの雪』 
1948 Hamlet『ハムレット』
1933 Little Women『若草物語-1933年版』

映画シネマ 

2019 Once Upon a Time... in Hollywood
   『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
2019 Jojo Rabbit『ジョジョ・ラビット』
2016 Melancholia『メランコリア』PDF
2012 Hitchkock『ヒッチコック
2012 Inception『インターセプション』PDF
2011 Hugo 『ヒューゴの不思議な発明』PDF
2010 Somewhere 『SOMEWHERE』PDF

2000 Marie Antoinette『マリー・アントワネット』
2009 Moon 『月に囚われた男』
2009 Shutter Island『シャッターアイランド』PDF
1999 Matrix 『マトリックス』PDF
1999 Carrie 『キャリー』 *リメイク版
1997 Titanic『タイタニック』

1990 Dances with Wolves 『ダンス・ウイズ・ウルブス』
1952 Limelight 『ライムライト』
1968 Once Upon a Time West 『ウエスタン』


芸術(音楽/美術/書道/舞踊)

2018 Bohemian Rhapsody 『ボヘミアン・ラプソディー』PDF
2016 Interlude in Prague 『プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード』PDF
1999 Shine『シャイン』
1984 Amadeus『アマデウス

2018 HITLER versus PICASSO and the others
   『ヒトラーvs. ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
2017 Final Portrait 『ジャコメッティ最後の肖像』 PDF
2017 Rodin 『ロダン カミュ―と永遠のアトリエ』PDFrodin_oohara.pdf
2016 Powidoki『残像
2015 Woman in Gold『黄金のアデーレ 名画の帰還』 
2014 The Monuments Men『ミケランジェロ・プロジェクト』PDF
2007 Nightwatchers『レンブラントの夜警』
2005 Modigliani 『モディリアーニ 真実の愛』PDF
1988 Camille Claudel『カミーユ・クローデル』
1996 The Pillow Book『ピーター・グリーナウェイの枕草子』
1965 The Agony and the Ecstasy 『華麗なる激情』  ※ミケランジェロとユリュースII世

2010 Black Swan『ブラックスワン』 
1948 The Red Shoes『赤い靴』

シェイクスピア劇映画化作品



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【研究事例】

映画と小説: 川端康成の『古都』を巡って
塚田三千代
©2017. m.tsukada.

I 原作(小説)の映画化
数多くの映画を鑑賞し映画史を俯瞰すると、映画には小説の映画化や、映画そのものをリメイクした映画が多いことに気づく。そして、小説の映画化作品や映画リメイク版には多彩なパターンがある。そこには原作(小説)と映画の差異と変容の進化が見られる。

外国映画の場合では、映画構成のパターンは3つである。
1. 内容が原作と全く同じ、ほぼ同じ。 2. プロットの終盤が変えられている。 3. 原作に基づいているが、新しいプロットで展開する。
その例をあげると、
1. に該当する映画は、イシグロ・カズオ原作の『日の名残り』(1993. 原題:The Remains of the Day 英・米. ジェームズ・アイボリー監督)や、『わたしを離さないで』(2010. 原題:Never Let Me Go マーク・ロマネク監督)等。2. に該当する映画は、パトリシア・ハイスミス原作の『リブリー』(1999.原題:The Talented Mr. Ripley 米国.アンソニー・ミンゲラ監督)である。この映画は『太陽がいっぱい』(1960. 仏・伊合作.ルネ・クレマン監督.)のリメイク版で、原作に忠実なプロットで描かれているが、わずかながら後半が違う。3. に該当する映画は、トルーマン・カポーティ原作の『ティファニーで朝食を』(1961. 原題:Breakfast at Tiffany’s 米国. ブレイク・エドワーズ監督)である。

1.と2.の場合はあまり問題ないが、3.の場合は原作の小説と比較してとやかく批判されることが多い。例えば、『ティファニーで朝食を』では、主役にマリリン・モンローを指定したのにオードリー・ヘップバーンになり、内容も変更されて主人公と猫と語り手の作家の恋を中心に描かれたので、原作者トルーマン・カポーティが猛抗議した。しかし、映画が封切られると大ヒットして小説も売れるという相乗効果が出た。現在、映画は名作古典映画として位置しており、小説も然りである。

では、川端康成の小説『古都』の映画化はどうだろうか。
『古都』の第1回目は1963年に岩下志摩(一人二役)主演で映画化され、第2回目は1980年に山口百恵(一人二役)主演で映画化され、35年ぶりに第3回目として2016年に松雪泰子(一人二役)主演で公開された。最初の1963年版はパターン1の原作と全く同じ、ほぼ同じに該当し、第2回目の1980年版は原作に登場しない人物で主要な役割を担う人物を終盤に登場させているのでパターン2に該当する。第3回目の2016年版は登場人物の世代を現代に置き替えて物語のプロットも変えてあるので、パターン3の原作に基づいて新しいプロットで展開する、に該当する。

2016年版『古都』がパターン3に該当する主な理由をまず考えてみたい。これは現時点での歴史の隔たりである。小説『古都』が刊行されたのは1962年で、3回目の映画化は2016年で、ここには半世紀もの時空間が存在する。しかもこの約半世紀に、『古都』の舞台である京都は都市の外観を急速に発展させて変貌した。京都観光総合調査(2013年)によると、この地を訪れる観光客は今や年間5000万人を超えるそうである。観光客は京都の古い神社や祭りを見る目的で訪れる人も多い。このような現代社会の状況から目をそらすことはできない。だからこそ2016年版『古都』はこの半世紀の時空の隔たりを織り込んで製作された。原作の小説は不変だが、映画作品は多様な違いを織り込み揺れ動きして進化する。映像の時代と称される21世紀において、原作の小説と映画作品の間に大きな差異と変容が見られるのは当然であろう。

II 川端康成の小説と映画
電波という動く映像の連続体である映画は、製作年の社会状況や文化事情をふまえて描かれるのは然るべきである。小説は紙媒体の作品として同一次元の中に存在し続けることが可能だが、映画は違う。

川端康成の『古都』以前の小説では、『伊豆の踊子』をはじめ、『舞姫』『雪国』『千羽鶴』等は文藝作品として日本では何回も映画化された。『眠れる美女』は日本で2回だが、海外では3回、仏・伊の合作映画、ドイツで2006年にVadim GlownaによるDas Haus der Schlafenden Schönen (独語の題名.日本映画のリメイク版)、2011年にオーストラリアではJulia Leigh監督の映画Sleeping Beautyで取り上げられた。これは原作が普遍的なテーマと映画的手法で書かれているので外国人に理解され易いからだ。さらにドナルド・キーンやE.G.サイデンステッカーの上質な英文による翻訳書が早くから出版されていた功績も大きい。

川端康成の小説『古都』が映画化された最初の映画作品(岩下志摩が一人二役)と2回目の映画(1963年版、山口百恵が一人二役)は、監督と主演女優の力演によって国内では大ヒットし、評価の高い映画作品として今も多くの人々の記憶に残っている。とくに1963年版は、1964年の第36回(米)アカデミー賞外国映画賞に監督の中村登と主演女優の岩下志摩がノミネートされたこともあって映画史に残る映画作品となった。ちなみに小説『古都』は、J. Martin Holmannoの英文翻訳で1987年にThe Old Capital として出版された。

III 小説と映画、その揺れる共存
小説『古都』は「春の花」の章で始まり、「冬の花」で終わる。春をすみれの花の優しさで象徴し、夏は祇園祭と松の緑を強調し、秋は嵯峨に咲く白い萩、別れの哀れさを託す冬の花を花のように見える枝打ち後の青い杉の葉で表象している。京都の四季の花の色に人生を重ね、同じ顔で別の二面性を持つ双子、同一性と離反性、人間の潜在的意識の顕在化を双子姉妹に表象して描き上げているのが小説『古都』である。本小説には川端康成の潜在的な感性と普遍的な観念を知る手掛かりがある。

一方、映画作品は映画化される時代と社会の流れにつれて変容し進化してゆく。2016年公開の映画『古都』は、川端康成の『古都』に基づく映画といえども、一目瞭然として、映画は序盤から違う。小説の映画化にあたって、原作と映画の間には本質的に差異があることを見て取れる。原作の小説は不朽不滅な作品として存在するが、映画化される映画はその折々で揺れゆくのである。それは美術作品のオリジナルと複製品や変容させた新たな作品との関係のようなものかもしれない。前述したパターンのように、映画化作品も多種多様に変容して進化している。だからこそ、そこに映画文化の地平が広がり、新たに映画史に加えられてゆく。

映画『古都』の3作品を鑑賞し小説『古都』に照らし合わせてみると、映画『古都』は三作三様のパターンで創られているが、その底流には川端康成が小説『古都』で表象したものと同種のものが流れていることを検知できる。それは人間が伝統に向き合う感性で普遍的な感性である。人間が人間に向きあう感性であり、本能的なもので、共有する感性である。川端康成の小説『古都』は不朽不滅の現近代小説として文学史に位置し、映画作品『古都』は製作時における時代観点で撮られた作品である。

『古都』をめぐる原作小説と映画作品には、京都の四季と伝統的な行事を背景に、巧みな会話技法で人間の感性と潜在的意識の顕在化を描いた小説『古都』が在り、そして、映画作品『古都』は時空を経てねじれ揺れながらも映像文化に位置する映画として在ると言える。

IV  川端康成小説の英語翻訳
川端康成の小説は数多くの外国語に翻訳されて出版されているので、今も世界的に愛読者や研究者が広がっている。翻訳にあたって、京ことばや日本語特有な情緒表現を表わす語句を、外国語でいかに伝えるかが難題であるが、そのハードルを乗り越えたのはエドワード・ジョージ・サイデンステッカー(Edward George Seidensticker)である。彼が英訳出版して川端康成の名前と小説を海外に広めた尽力はこの上なく大きい。

◆サイデンステッカーによる川端康成に関する英文翻訳は次の小説とノーベル賞受賞講演である。
The Izu Dancer (『伊豆の踊り子』 1955, 1964. )
Snow Country (『雪国』. C. E. Tuttle. 1956.)
Thousand Cranes (『千羽鶴』 1958. ) 
The Old Capital (『古都』 )  *補註1
Japan, the Beautiful and Myself (『美しい日本の私 ― その序説』ノーベル賞受賞講演. 1969.) 講談社現代新書
House of the Sleeping Beauties (『眠れる美女』1969.)  *補註2
Sound of the Mountain (『山の音』1970.)
The Master of Go (『名人』1972.)

*補註1: 『古都』の翻訳
ヴァルター・ドナードによるドイツ語訳は カール・ハンザ―出版から、さらにデンマーク語、イスパニア語、ポルトガル語訳など諸外国語で出版されている。
*補註2: 『眠れる美女』 (2007年の映画) 
DAS HAUS DER SCHLAFENDEN SCHONEN HOUSE OF THE SLEEPING BEAUTIES
言語:ドイツ語 
監督・脚本:ヴァディム・グロウナ
原作:川端康成『眠れる美女』

V  ’京ことば’の翻訳について
標準的な日本語でなく’京ことば’の英語翻訳の場合に、言葉が持つ感性はどのように伝わるのだろうか大いに興味を惹かれるところである。『古都』の英語翻訳の例ではどうであろか。1987年に、J. Martin Holman によって、”The Old Capital”の英語題名で、チャールズ・イー・タトル出版から刊行された。その翻訳の一部を引用して日/英語で味わってみよう。
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「似てるなあ。」
  千恵子には、熱いものが、つたわった。右と左に立ちかわってみて、
「ほんまに、生きうつしの上や、へええ。」
「ふた子どすもん。」
「人間はみんな、ふた子産んだら、どうどすやろ。」
「人ちがいばっかりして、お困りやしませんか。」
  と、苗子は一足さがると、目がぬれて、
「人の運命て、わからんもんどすな。」
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“We certainly do look like.”
  Chieko felt a hot rush enter her body. They changed sides.
“We’re really the very images of each other.”
“That’s what twins are,” Naeko said.
“What would happen if everyone had twins!” 
“People would always be mistaking one another. It would certainly cause problems.”
  When Naeko stepped back, her eyes were moist.
“One can never know fate.”

引用英文の出典
p.162. J. Martin Holman. (1987). The Old Capital. Tokyo. Tuttle Publishin

映画の比較研究
川端康成原作『古都』の映画比較 ~映画と小説に基づいて
2015 改定版『古都』と1963 初作『古都』


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