ゆっくりと開いた唇が、それを挟み込んで。
ちょっと舌で転がしてから、手で囲った炎を近付ける。
すーっと、一息吸い込み。
深い溜息のように、紫煙を吐き出した。
「・・・真山さん。煙草、吸い過ぎじゃないんですか?」
柴田の声がやけに遠くに聞こえて、真山は振り返る。
深々と冷え込んだ冬の日に、地面も空気も凍り付いてしまったかのようだ。
その分と云わんばかりに、夜空には信じられないほどの星が広がっていた。
「何? 何か云った?」
数歩後ろを歩いている女は、心許無そうに上目遣いに真山の顔を見る。
それを特別気にするでもなく、紫煙だか寒さによる白い吐息なのか判らない物を言葉と共に唇から零れ落とした。
「・・・煙草です。そんなに吸ってて、大丈夫なんですか?」肺に悪いですよ?
同じように白い息を吐くのだから、さっきのは寒かったからか、と、真山は何となく考える。
返事をしないまま、再び前を向いて歩き出した。
ただ帰る為に歩く道は、特別急ぐ事もなくて。
ゆっくり、ゆっくりと足を運ぶ。
それに合わせたように、紫煙もをゆらりと燻らせた。
真山さん、知ってますか?
煙草はホントに身体に悪いんですよ?
真山さん?
歯の裏なんて、真っ黒になっちゃうんですよ。
ホントです。
肺の中まで真っ黒になっちゃうんですよ?
舌癌、喉頭癌、肺癌、・・・・。
癌ですよ?
正露丸じゃあ、治らないんですよ?
・・・第一、中毒になったら・・・やめらんないんですって。
ずっと吸いつづけていると・・・・中毒になるんですよ?
煙草って・・・・。
徐々に小さくなる声は、何時のまにやら俯いた顔の所為か。
真山は前へと進めていた足を、やおら止めてみる。
一息煙を吸い込めば、チリリと音を立てて赤い火がフィルターを焼いて行った。
「何? さっきっから、何云ってるの?」
特別苛立つでもない声が、風も無い、真夜中の空気に流れる。
「いえ。・・・別に何でも無いんですけどね。」
ぶおぉぉぉん・・・・
遠くで車が走り去る音がし、それに少し聞き入るよう小首を傾げてから、再び口を開いた。
「ちょっとだけ。羨ましいなぁって・・・。」
「え?」
「ちょっとだけ。煙草が羨ましいな・・・って、思っちゃいました。」
「何、それ。」
「だって、いつも真山さんのポケットにいて、いつも必要とされてて。」
いいなぁって、思っちゃったんです。
「・・・は。馬鹿じゃないの?」
「・・・・スミマセン。」
シュンと項垂れる女を見遣って、周りを見廻す。
溜息を一つ落とすと、肩を竦ませた。
しゃがみ込んで靴先で煙草の火を消し、しばらくそれを眺めた後、ポケットに捻じり込む。
よいしょ。
言葉に出して、立ち上がった。
「―― ちょっと、こっちおいで。」
真山が柴田の手を取って、やや乱暴に引っ張る。
女の身体が斜めにぶれた。
連れて来られたのは小さな雑貨店。
当然のようにシャッターは閉じられている。
「・・・何ですか? もしかして、捜査対象のお店ですか?」
訝しげだった女の目が、突然に輝き出した。
「違うよ。馬鹿。静かにしてろ。」
真山が頭を一叩きしてから、顎を横に向けて突き出す。
「え・・、こっち?駐車場の奥ですか? 何もありませんよ。背の高い垣根の中に大きな樹があるだけじゃないですか。 ・・・真山さん?」
背後からの気配に、思わず振りかえる。
真山の腕が柴田の肩を掴み。
あっと思う間もなく、ぽつんとある大木に背中を押しつけられた。
「真山さんっ?」
「しっ!! 黙れよ。聞こえちまうぞ。」
面白そうに云い切って、直ぐに柴田の唇を塞く。
余りの事にぎゅっと噛締めていた歯列を、男の舌が嬲るように蠢いた。
――― 煙草の匂いがする。
それに意識が持って行かれ、スカートからブラウス類を引きずり出された事に 気付くのが遅れる。
結果、滑り込んできた手の冷たさに驚いて、ハッと口内の力を抜いてしまった。
これぞチャンスと云わんばかりに、真山の舌が指し込まれる。
ぬらりとした感触と刺すような煙草の苦味が、柴田の意識を混濁させた。
舌で舌を絡め上げ。
上顎を柔らかく舐め。
尖らせた先端で、舌の先を刺激する。
溢れた唾液が、合わせられた唇から首筋にまで伝い落ちた。
滑り込んでいた掌が、身体を確かめるように動き回る。
腹部から、背中へと擦り上げ。
時たま爪を立てて引っ掻き下ろす。
胸元を通り過ぎて首筋まで指を這わせると、少し下へ戻って、張り詰めている胸を包み込んだ。
ゆっくりと揉みしだくと、中央の赤い実が固く熟れ始める。
先端を指の腹で捏ね回し、爪で軽く弾いた。
「・・・んっ!」
塞がれたまま上げる声は、酷くくぐもる。
その声を、まるで吸い取ってしまうかの如く、更に深くくちづけた。
揺れ始めた腰に、衣類越しの真山自身を押し付けて、その刺激に我を忘れる。
乳首から離した手で、必要以上に長いスカートをたくし上げた。
太腿を、愛しむように撫で上げる。
ショーツの上から丸い臀部を掌で包み込み、揉んだ。
滑らせた指をその勢いのままのスピードで、ショーツの中に潜り込ませる。
既にぐっしょりと濡れそぼっている秘所は、やすやすと男の指を受け入れた。
軽く表面を往復させて。
時折当るクリトリスが、その度に大きく膨らんで行く。
「・・・・すげぇ。もう、こんなになってんの?」
触れる程度に唇を離してから、わざと意地悪く囁いた。
「いや・・・。」
思わず羞恥に首を振る。
しかしそれは、首を動かした程度のモノにしかならず、すぐさま真山の唇へと 再び塞がれてしまった。
全体重を掛けて木に押し付けられ、膝で割られた秘所は指を這わせられ。
真山の舌を噛み切ってしまうのではないかと思うほど、柴田は声を殺す事がきつくなっていた。
「・・・ん、んん・・・ぅん・・」
「静かにしろってば。」・・じゃないと、止めちゃうよ?
云うが早いか、いきなり柴田の片足を持ち上げると、ショーツを抜き取る。
靴に付いた土で、それは黒く汚れてしまった。
片方の足首に、ショーツが纏まり落ちる。
真山は自分のスラックスのベルトとファスナーを外すと、脚の付け根まで下着と共に下ろした。
――― 夜目にも鮮やかな、白い素肌と 抱く男。
だが黒いコートは、そんな姿をも闇に溶かし、隠してしまう。
真山は寒さなど忘れて、女の身体をまさぐった。
やがて、柴田の片足を自分の肘に掛けると、自身の先端を外気に剥き出された女の秘所へとあてがう。
ずるっ。
ゆっくりと埋め込んだ。
「・・ぅ、ぅん・・んん〜・・・」
柴田の塞がれた声が、苦しそうに闇に零れる。
それを無視して、男は奥へと自らを進めた。
円を描く様に押しつけ、抜け切るギリギリまで自身を引く。
柴田の中の熱さと、絡み付くような粘膜の突起が、直ぐに真山から余裕を奪っていった。
「・・ふぅ・・っ・・・」
僅かに離れた唇から、漏れる息が白く煙る。
既に力の入らなくなっている女の臀部を握り、真山はこれでもかと云う位に突き上げ続けた。
柴田の身体がゆさゆさと上下に揺すされ、縋るように掴まった指が爪を剥き出す。
「――――ぁ・・・」
どくり。
男の欲望が、脈を打って飛び出した。
立っていた為に、直ぐに白濁した体液は柴田の足を伝い、流れ落ちる。
それは、スカートの内側を汚して靴下へと辿り着き、吸収された。
「イヤ〜〜〜ン、なんて事するんですかぁ。」
低く押えた声で、抗議する。
「お前だって、嫌がんなかったジャン。」
カチャカチャと甲高い音をさせて、真山は何事も無かったかのように身支度を整えた。
「ああ〜〜〜〜。パンツまで、こんな土だらけにしちゃって・・・・。どうしてくれるんですか。穿けないじゃないですかぁ!」
落としたショーツをちょっと見て、諦めたようにもう一つの足を引き抜く。
それを脇に置いてあったトートバックへ、無造作に丸めて突っ込んだ。
「あ〜〜〜、スース―しますぅ。」
もじもじと足をくねらせ、唇を尖らせる。
「ゴチャゴチャと煩いね。おまえが変な事云うからでしょう。」
「変な事?」
垣根を掻き分けて駐車場に出ながら、柴田が訊き返した。
「煙草。」
「え?・・・煙草の事ですか?」
彼女は訳が判らないと、きょとんとする。
深夜の駐車場は、耳がキンと痛くなるほどに静まり返っていた。
「煙草に嫉妬するなんてさ、可愛い事云ったじゃん。」
真山がにやりと笑う。
「・・・・え?それがどうして・・・こうなっちゃうんですか?」
情事の余韻を残した柴田が珍しく腕を絡ませたが、真山から、拒否の意思表示は無い。
それが嬉しくて、甘えたように顔を見上げた。
「だからさ。俺は煙草には勃起なんてしないの。」
判る?
「・・・・は?」
きょとんとした丸い目が可笑しくて、真山がくっと口の中で笑う。
組まれた腕を外して、細い肩を抱き寄せる。
「ニブ過ぎだよ? お前。」
まだ何か云いたそうな女の唇を、再び塞ぎ込んだ。
おしまい♪
2002/01/21 up
香奈ちゃんのBBS47000番ゲットリクです。
お題は「嫉妬する真山さん(もしくは柴田)の裏物」
今回は柴田で行かせて頂きました〜。
なんと9月の頭に頂いたリクで、ホントにとってもお待たせしてしまいました★
ごめんね〜〜〜〜(号泣)